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いじめによりけがをした場合に学校に責任を問えるのか?

子どもが学校でいじめに遭い、心身に深刻なダメージを受けたという話はよくあります。

特にいじめによってけがをした場合、保護者としては「学校に責任はないのか」と疑問に感じるかもしれません。

今回は、いじめによって生じたけがに対して、学校がどのような責任を負う可能性があるのかを解説します。

学校が責任を負うための法的根拠

学校の責任を検討するにあたり、まずはその法的根拠を確認する必要があります。

公立校と私立校では、適用される法律や損害賠償請求の相手が異なる点にも注意が必要です。

公立学校の場合

公立学校が国家賠償責任を負うパターンは、以下の2つです。

 

  • 国家賠償法第1条第1項
  • 国家賠償法第2条第1項

 

教職員が職務上の行為として違法行為を行い、結果的にけがが発生した場合は国家賠償責任が成立する可能性があります(国家賠償法第1条第1項)。

「職務行為か否か」の判断は実質的にされ、職務との相当な関連性がある限り、違法な黙認・放置も含まれます。

いじめの未然防止義務(学校設置者の安全配慮義務)がどの程度果たされたかも重要です。

 

たとえば、「いじめに関する複数の通報があったにもかかわらず、教員が対応を怠ったことが明らか」「その結果としてけがに至った」などのケースです。

公共施設に問題があり、それが原因で他人に損害が出た場合も、国家賠償責任が成立する可能性があります(国家賠償法第2条第1項)。

上記の際、教員の故意・過失があったかどうかは関係ありません。

国家賠償法第2条(施設の管理に問題がある場合)の適用は、校舎や設備などが直接けがの原因となった場合に限定されることが多く、いじめに関する責任は、通常は第1条(職務上の行為の違法性)に基づいて検討されます。

国家賠償法に基づく請求では、賠償の相手が「加害者個人」ではなく「自治体」となる点が大きな特徴です。

私立学校の場合

私立学校の教職員は「公務員」ではないため、国家賠償法は適用されません。

その代わりに、民法に定められた「使用者責任(民法第715条第1項)」「工作物責任(民法第717条第1項)」によって、学校法人の責任が問われます。

教職員が職務中に不適切な対応をしたり、いじめを放置していたような場合、学校法人は使用者として責任を負う可能性があります。

使用者がその業務のために他人を使っている以上、「その従業員(教員など)の過失による損害に対しても責任を持つ」という考え方です。

また、工作物責任は、建物や設備などの管理に問題があって事故・損害が発生した場合に課される責任です。

私立学校の敷地内にある設備は、基本的に学校法人が所有しているため、学校法人に対して責任を問える可能性があります。

いじめをした本人の責任は追及できるのか

いじめによって子どもがけがをした場合、自治体や学校だけでなく、加害者本人やその保護者に対しても法的責任を追及できる可能性があります。

加害者本人には民法上の不法行為責任

加害生徒が被害生徒に身体的・精神的な損害を与えた場合、当該行為は民法上の「不法行為」とされるのが一般的です。

被害者側は、加害者本人に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

関連して、私立学校の教員本人に対しても、場合によっては不法行為による損害賠償を請求できます。

一方で、公立学校の教員は公務員であり、本人への責任追及は基本的にできません。

最高裁も、公務員の個人責任を否定する見解を示しています(最判昭30.4.19)。

加害者が「責任無能力者」であれば保護者の責任

民法第712条、第713条では、責任能力に関して定められています。

簡単にまとめると、自分の行動が悪いことだと理解できないほど幼かったり、精神的な障害があったりする場合は責任能力を追及できません。

判例では、12歳程度までは、責任能力がないと判断されるケースが多いようです。

こうした責任無能力者によるいじめがあった場合、民法第714条により、原則としてその保護者が責任を負います。

いじめによりケガをした場合に弁護士へ相談するメリット

いじめでけがをさせられたとき、「誰に、どのように責任を問えばよいのか」がわかりにくい場合もあります。

法律の知識がない状態では、保護者またはいじめを受けた本人だけで冷静に対応するのは困難です。

弁護士へ相談すると、以下のようなメリットがあります。

 

  • 法律的に正しい判断ができる
  • 交渉や請求手続を任せられる
  • 損害額の適正な評価ができる
  • 裁判になった場合の対応も可能

 

それぞれ確認していきましょう。

法律的に正しい判断ができる

加害者本人・保護者・学校・自治体など、誰に対して責任を追及すべきかは、ケースごとに異なります。

弁護士は事実関係をもとに、「どの法律が適用されるのか」「どの範囲で請求できるのか」を整理し、方針を明確にしてくれます。

交渉や請求手続を任せられる

学校や教育委員会とのやり取りは、心理的な負担が大きくなりがちです。

また、相手側が責任を否定する場合、交渉が長期化する傾向があります。

弁護士に依頼すれば、加害者や学校との交渉、必要な通知・請求書の作成、損害額の算定などを一括して任せられます。

損害額の適正な評価ができる

治療費や交通費などの明確な費用だけでなく、慰謝料や逸失利益といった金額の算定には専門的な知識が必要です。

弁護士は過去の判例や算定基準をもとに、妥当な金額を見積もりつつ、相手方と交渉できます。

裁判になった場合の対応も可能

話し合いがまとまらない場合には、調停や裁判に進む可能性もあります。

弁護士がいれば、訴訟の提起や必要書類の作成、裁判所での主張立証もすべて対応してくれます。

まとめ

いじめによってケガをした場合、学校に責任を問えるかどうかは、いじめの内容や学校側の対応によって判断されます。

学校がいじめを把握しながらも、適切な措置を講じていなかった場合、安全配慮義務違反として責任が認められる可能性があります。

損害賠償を請求するには、事実を裏付ける証拠が必要です。

必要に応じて、弁護士などの専門家に相談してください。

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岩熊 豊和弁護士

岩熊 豊和Toyokazu Iwakuma

私は小学校入学と同時に野球を始め、楽しく真剣に打ち込んできました。

弁護士登録後も野球チームに入り、たくさんの選手の笑顔を見ている中で、「野球が好きだなぁ」という思いを改めて実感いたしました。

スポーツの現場では、暴力行為やパワハラ、いじめなどさまざまなトラブルが発生しているものの、選手が泣き寝入りをする結果となってしまうことも珍しくありません。

「スポーツを楽しむという原点を取り戻すこと」を目標に、スポーツを心から楽しむ選手を守るためリーガルサポーターとして日々取り組んでいます。

丁寧にお話をお伺いいたしますので、お悩みの方はぜひ当事務所へお問い合わせください。

所属団体

  • 福岡県弁護士会
  • 公益財団法人日本スポーツ協会ジュニアスポーツ法律アドバイザー

経歴

  • S47.11 福岡県飯塚市に生まれる
  • H3.3 福岡県立東筑高等学校卒業
  • H5.4 大阪大学法学部入学
  • H9.3 大阪大学法学部卒業
  • H10.10 司法試験合格
  • H11.4 司法修習生(53期)
  • H12.10 弁護士登録、はかた共同法律事務所入所
  • H30.9 岩熊法律事務所開設

事務所概要Office Overview

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