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いじめ加害者に反撃した場合正当防衛になるのか

いじめは、被害者の心身に深い傷を負わせる深刻な問題です。

教室や校庭、あるいは通学路といった日常生活の場で、突然の暴力や嫌がらせに直面したとき、身を守るために思わず相手を突き飛ばしたり、殴り返したりすることがあるかもしれません。

今回は、いじめの現場における反撃と正当防衛の関係について解説します。

正当防衛の成立要件は?

いじめ加害者からの攻撃に対して反撃を行い、それが正当防衛として認められるためには、おもに以下の3つの要件をすべて満たしている必要があります。

①急迫不正の侵害が存在すること

正当防衛が認められるための第1の要件は、現在進行形で攻撃を受けているか、あるいは攻撃が直前に迫っているという急迫性があることです。

法律用語ではこれを「急迫不正の侵害」と呼びます。

いじめ加害者による不正な攻撃が現に行われている、または差し迫っている状況がこれに該当します。

また、相手の行為が「不正」であること、つまり違法な侵害であることも条件となります。

②自己または他人の権利を防衛する意思があること

正当防衛の第2の要件は、自分自身や、その場にいる他人の生命、身体、自由、財産などの権利を守ろうとする防衛の意思があることです。

相手を傷つけること自体が目的であったり、最初から喧嘩をするつもりで反撃したりする場合は、防衛の意思が認められない可能性があります。

もし、攻撃的な動機が強く、それが反撃の主な原因であったと判断されると、正当防衛の成立が難しくなることがあります。

純粋に身を守るための行動であったかどうかが、判断の分かれ目となります。

③やむを得ずにした行為であること

正当防衛が成立する第3の要件は、その反撃行為が侵害を排除するためにやむを得ず行われたものであることです。

これは、反撃の内容が防衛のために必要最小限度の範囲内であることを意味します。

いじめ加害者から暴力や不正な侵害を受けている場合、その侵害を排除するために反撃する行為は、上記の要件を満たせば正当防衛が成立します。

たとえば、急に殴りかかってきた加害者に対し、その腕を振り払ったり、相手の動きを止めるために一度突き飛ばしたりする行為は、身を守るための合理的な範囲とみなされやすいです。

逃げることが可能であったか、あるいは他の方法で侵害を回避できたかという点も、この要件の判断に影響します。

いじめ加害者への反撃が過剰防衛になるケースとは

正当防衛の要件を一部満たしていても、その程度が適切でない場合には過剰防衛として扱われることがあります。

過剰防衛とは、防衛の意思はあったものの、その方法や程度が「やむを得ない範囲」を超えてしまった状態を指します。

防衛行為が必要最小限度を超える場合、正当防衛は成立せず、過剰防衛として刑が減免されるにとどまることがあります。

反撃が一連一体のものと評価される場合、全体として防衛の程度を超えていれば過剰防衛となります。

たとえば、いじめ加害者が一度殴ってきた際、それを防ぐために押し返したところまでは正当であっても、相手が転んで戦意を喪失しているのに、さらに追い打ちをかけて何度も蹴り続けるといったケースです。

また、相手が立ち去ろうとしている背中を攻撃する場合も、侵害がすでに終了しているため、正当防衛ではなく過剰防衛や、最悪の場合は単なる暴行罪・傷害罪となる可能性があります。

過剰防衛と判断されると、犯罪自体は成立するため、前科がつく可能性や、民事上の損害賠償責任を負うリスクが生じます。反撃をする際は、あくまで相手の攻撃を止めることが目的であり、必要以上のダメージを与えることは法的に許されないという認識が重要です。

いじめ加害者への反撃が正当防衛となるかの判断ポイント

いじめへの反撃が正当防衛として認められるかどうかを分けるポイントは、いくつかあります。

まず、いじめ加害者からの急迫不正の侵害が現に存在したかどうかという点です。

これは目撃者の証言や防犯カメラの映像、怪我の状況などから判断されます。

言葉のいじめに対して暴力で応じた場合は、身体的な侵害がなかったとみなされ、正当防衛は原則として成立しません。

次に、反撃行為が防衛のために必要最小限度のものであるかです。

相手との体格差、年齢差、武器の使用の有無などが考慮されます。加害者が複数で襲ってきた場合など、1人に対してよりも強い反撃が認められやすい状況もありますが、あくまで相手の攻撃を止めるのに必要な強さであったかが基準となります。

さらに、防衛の意思が認められるかどうかも大切です。

反撃の際、どのような言葉を叫んでいたか、あるいはその後の行動はどうであったかなどが、内面的な意思を推測する材料になります。

相手を屈服させるためではなく、自分が安全になるための行動であったことが示されなければなりません。

そして、反撃が侵害排除のために合理的な範囲にとどまっているかです

これらを総合的に判断し、個別具体的な事情に応じて正当防衛の成立が認められるかどうかが決まります。

まとめ

今回はいじめ加害者への反撃が正当防衛になるのかについて解説しました。

いじめの被害者が自分を守るために必死で行ったものであっても、場合によっては正当防衛が認められないこともあります。

もし深刻ないじめに悩んでおり、反撃を考えてしまうほど追い詰められている場合は、学校問題やいじめに精通している弁護士に相談することを検討してください。

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資格者紹介Staff

岩熊 豊和弁護士

岩熊 豊和Toyokazu Iwakuma

私は小学校入学と同時に野球を始め、楽しく真剣に打ち込んできました。

弁護士登録後も野球チームに入り、たくさんの選手の笑顔を見ている中で、「野球が好きだなぁ」という思いを改めて実感いたしました。

スポーツの現場では、暴力行為やパワハラ、いじめなどさまざまなトラブルが発生しているものの、選手が泣き寝入りをする結果となってしまうことも珍しくありません。

「スポーツを楽しむという原点を取り戻すこと」を目標に、スポーツを心から楽しむ選手を守るためリーガルサポーターとして日々取り組んでいます。

丁寧にお話をお伺いいたしますので、お悩みの方はぜひ当事務所へお問い合わせください。

所属団体

  • 福岡県弁護士会
  • 公益財団法人日本スポーツ協会ジュニアスポーツ法律アドバイザー

経歴

  • S47.11 福岡県飯塚市に生まれる
  • H3.3 福岡県立東筑高等学校卒業
  • H5.4 大阪大学法学部入学
  • H9.3 大阪大学法学部卒業
  • H10.10 司法試験合格
  • H11.4 司法修習生(53期)
  • H12.10 弁護士登録、はかた共同法律事務所入所
  • H30.9 岩熊法律事務所開設

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