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いじめでうつ病になった場合|いじめの証明と慰謝料の請求について

学校生活やスポーツ現場などにおいていじめがあり、うつ病を発症した場合に、慰謝料の請求はできるのでしょうか。

いじめの証拠がある場合や、いじめとうつ病の因果関係が認定できる場合には、それらをもとに加害者などへ損害賠償請求できる可能性があります。

この記事では、いじめでうつ病になった場合にいじめを証明する方法と、慰謝料の請求について解説します。

いじめとは

文部科学省は児童生徒のいじめを以下のように定義しています。

 

  • 同じ学校に在籍しているなど、一定の関係がある児童生徒から行われるもの
  • 心理的、物理的な影響を与える行為
  • いじめられた本人が心身の苦痛を感じているもの
  • いじめの発生した場所は学校の内外を問わない

 

たとえ加害者が「遊びの範囲だ」と主張したとしても、被害者が苦痛を感じているものはいじめと認定されます。

肉体的な被害や物質的な損害だけでなく、精神的な苦痛を感じている場合も対象です。

また本人に対する攻撃だけでなく、SNSを通じて不特定多数に本人の嫌がる情報を流出させることもいじめに該当します。

本人が嫌がっているにもかかわらず故意に何度も繰り返したり、一方的に行為を行ったりした場合などは、よりいじめと判断されやすくなります。

いじめによる損害賠償請求

民法第709条において、故意又は過失により他人の権利や法律上保護される利益を侵害した場合、損害を賠償することと定められています。

いじめと呼ばれる行為は、その内容によって次のような刑法上の犯罪に該当する可能性があります。

 

  • 身体に攻撃する:暴行罪・傷害罪
  • 財産を奪う:窃盗罪
  • 脅迫して従わせる:強要罪
  • 社会的評価を下げる行為:名誉毀損罪・侮辱罪

 

これらは民法上の不法行為としても認められ、慰謝料を請求できます。

子どものいじめだけでなく、大人による職場などでのいじめも同様です。

損害賠償請求できる相手

いじめによる損害賠償請求は加害者に対して行います。

しかし加害者が責任能力を持たない未成年者の場合、賠償責任を問えないこともあります。

その場合には、加害者の保護者に対し監督義務違反として慰謝料を請求できる可能性があります。

民法第714条では、責任能力のない者を監督している者は、その責任能力のない者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負うとしているからです。

また加害者自身に責任能力がある場合でも、保護者が適切なしつけを怠りいじめが起きたと証明できれば、加害者だけでなく保護者に対しても損害賠償請求できる可能性があります。

 

さらに学校側がいじめを防止する措置を怠ったと証明できれば、学校に対しても慰謝料を請求できる可能性があります。

公立学校の場合は国や公共団体などの学校設置者が、私立学校の場合は学校の運営者が被害者に対して責任を負います。

慰謝料を請求するための証拠

いじめに対する損害賠償請求を行うためには、いじめがあり、被害にあった証拠を集めなければなりません。

証明する事項は次の通りです。

 

  • 具体的ないじめの内容や頻度
  • いじめによる被害
  • いじめとうつ病の因果関係

 

いじめの内容を証明する方法として、行われた行為を撮影・録音する方法があります。

SNSなどで公開された悪口などはスクリーンショットを撮って保存してください。

可能な限りすべての行為の証拠を残すことで、いじめの頻度も証明できます。

 

危害を加えられた場合には診断書を取る方法もありますが、小さな怪我などはその都度写真を撮っておくことも大切です。

精神的な苦痛により心身に症状が現れた場合には、日記などに日時や症状を書き残しておいてください。

 

うつ病と診断された際には、診断書の取得も必要です。

いじめの内容や頻度、それに伴う心身の症状から、いじめとうつ病の因果関係を証明できる可能性があります。

 

また学校に対して慰謝料を請求するためには、学校に相談した記録やその際の学校の対応を証拠として残しておく必要があります。

刑事告訴できる可能性もある

いじめの内容によっては、民事での損害賠償請求だけでなく刑事告訴できる可能性もあります。

刑事告訴とは、被害者が警察に対し加害者の処罰を求める手続きです。

刑事告訴が受理され起訴に至った場合、加害者に刑事罰を与えられる可能性があります。

 

警察が刑事告訴を受理する可能性は、具体的な証拠がそろっているほど高くなります。

いじめの内容が刑法上の犯罪行為に該当しており、証拠がじゅうぶんにそろっている場合には刑事告訴も検討できます。

まとめ

この記事では、いじめでうつ病を発症した場合にいじめを証明する方法と慰謝料について解説しました。

いじめの事実を証明できれば、加害者やその保護者、学校などに対して慰謝料を請求できる可能性があります。

証拠は動画や録音など客観性があるもので、数が多いほど効果的です。

またいじめの内容や証拠によっては、損害賠償請求だけでなく、刑事告訴が可能な場合もあります。

いじめの被害にあった場合の対応は弁護士までご相談ください。

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資格者紹介Staff

岩熊 豊和弁護士

岩熊 豊和Toyokazu Iwakuma

私は小学校入学と同時に野球を始め、楽しく真剣に打ち込んできました。

弁護士登録後も野球チームに入り、たくさんの選手の笑顔を見ている中で、「野球が好きだなぁ」という思いを改めて実感いたしました。

スポーツの現場では、暴力行為やパワハラ、いじめなどさまざまなトラブルが発生しているものの、選手が泣き寝入りをする結果となってしまうことも珍しくありません。

「スポーツを楽しむという原点を取り戻すこと」を目標に、スポーツを心から楽しむ選手を守るためリーガルサポーターとして日々取り組んでいます。

丁寧にお話をお伺いいたしますので、お悩みの方はぜひ当事務所へお問い合わせください。

所属団体

  • 福岡県弁護士会
  • 公益財団法人日本スポーツ協会ジュニアスポーツ法律アドバイザー

経歴

  • S47.11 福岡県飯塚市に生まれる
  • H3.3 福岡県立東筑高等学校卒業
  • H5.4 大阪大学法学部入学
  • H9.3 大阪大学法学部卒業
  • H10.10 司法試験合格
  • H11.4 司法修習生(53期)
  • H12.10 弁護士登録、はかた共同法律事務所入所
  • H30.9 岩熊法律事務所開設

事務所概要Office Overview

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